コンテンツ実務ガイド

BUSINESS SUCCESSION GUIDE

事業承継で経営判断を引き継ぐには?判断条件と理由を残す7項目の架空記入例

取引先から納期短縮を頼まれたとき、現経営者なら受けるか断るかを判断できても、後継者は同じ材料を持っていないかもしれません。この記事では、判断条件と理由を7項目に残した架空の完成例を示します。

完成例を読む

先に結論

これは、一つの判断を渡すための見本です

この完成例は、事業承継計画のすべてを埋めるものではありません。後継者が最初の一件を書けるように、現経営者が普段どの事実を見て、どこで止まり、誰と決めているかを一つの判断場面にまとめたものです。

資産や手順だけでは残りにくいもの

条件がいつもと違うときの判断、例外を認めない理由、相談する順番、決めてよい範囲です。

設備、株式、契約、顧客一覧、手順書を渡しても、想定外の依頼に対する経営判断までは自動的に伝わりません。平常時の手順に加えて、判断に使う材料と境界を一緒に残します。

完成形を見る

納期短縮を求められた場面の記入例

空欄のテンプレートではなく、一件を最後まで埋めた状態を示します。

架空例です。実在の企業・取引先・契約・金額とは関係ありません。

判断場面の前提 主要取引先から、通常より5営業日短い納期で追加生産を依頼された。
  1. 01

    判断場面

    追加注文を短納期で受けるか、通常納期を提案するかを決める。

  2. 02

    先に確認する事実

    既存受注の納期、材料在庫、外注先の空き、品質検査に必要な日数、現場責任者の負荷を確認する。

  3. 03

    原則

    既存受注の納期と検査工程を崩さずに対応できる場合だけ、短納期を受ける。

  4. 04

    例外・停止条件

    重要取引先でも、検査日数を削る、既存顧客の確約納期を遅らせる、夜勤を連続させる必要がある場合はその場で受けない。代替納期と分納案を提示する。

  5. 05

    理由・過去の背景

    以前、営業判断で短納期を受け、検査待ちが増えて既存顧客への出荷が遅れた。売上額だけでなく、既存約束と検査能力を先に守る方針に変えた。

  6. 06

    相談先・権限

    営業責任者が事実を集め、製造責任者と品質責任者が可否を確認する。通常納期から3営業日以内の短縮は代表承認、4営業日以上は受注前に経営会議で決める。

  7. 07

    見直し時期

    主要設備、検査工程、外注先、標準納期、権限者のいずれかが変わった時、または半年ごとに見直す。

自社へ置き換える

7項目は、次の順で書くとつながります

  1. 判断場面誰から何を求められ、何を決める場面かを一つに絞ります。
  2. 先に確認する事実意見ではなく、決める前に見る数字、在庫、契約、負荷、予定を書きます。
  3. 原則通常なら何を守り、どの条件なら進めるかを一文にします。
  4. 例外・停止条件取引先が重要でも越えない線と、止めた後に出す代案を残します。
  5. 理由・過去の背景過去の失敗や方針変更を、後継者が判断条件を変える前に読める形にします。
  6. 相談先・権限事実を集める人、確認する人、最終的に決める人と範囲を分けます。
  7. 見直し時期設備、取引条件、担当、権限が変わったときに古い判断を更新できるようにします。

次に行うこと

最近の判断を一件だけ選び、非公開で書く

まず、現経営者なら答えられるのに理由が記録されていない判断を一件選びます。7項目を埋め、後継者が「同じ条件なら同じ判断ができるか」「条件が変わったとき誰に確認するか」を読み返せる状態にしてください。

実名は役割名に置き換え、記録は閲覧できる人を限った社内の場所に保管してください。制度や契約の判断が関わる場合は、この記録だけで決めず、専門家に確認してください。

最初の一件に向く場面
  • 値引きや特急対応を受けるか
  • 例外的な支払条件を認めるか
  • 設備停止時にどの受注を優先するか

前段の論点後継者不在の中小企業に何が起きているか